寄生虫と中間宿主の生態調査から「顧みられない熱帯病」を予防する!学術系クラウドファンディング「academist」でプロジェクトを開始!
2020年1月24日 橋爪裕宜
長崎大学博士課程学生の橋爪裕宜は、東南アジアに蔓延する寄生虫症対策を目指し、寄生虫・中間宿主の生態調査を新規手法を用いて研究を進めるため、学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」でプロジェクトを公開しました。
【研究背景】
熱帯・亜熱帯地域に蔓延し、深刻な健康被害をもたらす病気のことを「顧みられない熱帯病(NTDs)」と呼びます。NTDsのひとつに、東南アジアで深刻な健康被害を引き起こしている病気、タイ肝吸虫症があります。
主にタイ・ラオスで蔓延しており、川魚を生で食べることでタイ肝吸虫という寄生虫に感染し、治療せずに20年ほどの期間を過ごすことで最終的に胆管がんとなる病気です。タイ・ラオスで1000万人の感染者がいると推定され、大きな健康問題と捉えられています。魚の生食は地域文化に深く根ざしているため、蔓延地域では高い感染率が維持され続けています。
この寄生虫は巻貝と魚類の体内で成長し、最後にヒトを含む哺乳類に感染します(この貝・魚のことを中間宿主と呼びます)。季節によって水域が大きく変わるため、中間宿主も移動していることが示唆されています。
【研究の目的】
薬や教育だけでは蔓延を食い止めることはできず、別のアプローチが必要と考えました。しかし、広大な水田地帯に存在する寄生虫や中間宿主の分布や季節性の移動は、実はあまりわかっておらず、調査には大きな労力がかかります。
環境中の生息地を特定し、また水域変化による生息地変動を把握することは、将来タイ肝吸虫がどこに移動し流行するか予測することにつながると考えています。予測結果は、調査・治療・予防対策などの社会政策に役立てられることが期待できます。
私はこの目標を、「環境DNA技術」を用いて達成しようと考えています。環境DNAとは水中に含まれている遺伝子情報のことで、水を調べることでその水域にどんな生き物がいたか特定することができます。この10年弱で急速に普及してきた環境DNA技術を活用し、タイ肝吸虫と中間宿主の分布を調べようと計画しています。調査を通して、魚を生で食べても安全な漁場の特定、タイ肝吸虫の環境中への流入経路の推定、流行地推定や予測などにつなげられると考えています。
クラウドファンディングを通して得られた研究費は、研究1年目の財源とさせていただきます。1年目でデータを出すことができれば、次の研究費申請にもつなげることができると考えています。最初の1歩を応援いただけると幸いです。
ご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
【クラウドファンディングの概要】
プロジェクト名:寄生虫と中間宿主の生態調査から「顧みられない熱帯病」を予防する!
クラウドファンディング実施期間:2020年1月15日〜2020年3月19日
目標金額:50万円
URL:
https://academist-cf.com/projects/166?lang=ja
【実施者について】
橋爪裕宜と申します。山口県防府市生まれです。
子供の頃から自然環境をテーマに仕事をしたいと思っており、神戸大学人間発達環境学研究科でタイ肝吸虫生態調査に取り組みました。その後、温暖化対策につながるような仕事をしたいと、民間企業でプラントエンジニアとして勤めていましたが、感染症研究のおもしろさが忘れられず、大学院博士課程に進学しました。環境と感染症をテーマに仕事をしたいと考えており、このまま研究の道を進んでいく所存です。専門は分子生態学ですが、長崎大学が得意とする疫学と、会社で学んだ工学の知見を生かした独自の研究につなげたいと思っております。
・academistについて
academistは、日本初の研究費獲得に特化したクラウドファンディングサービスです。クラウド(Crowd:群衆)+ファンディング(Funding:お金を集める)という語源からわかるように、研究者が研究アイデアを実現するための資金をインターネットを通じて多数の支援者から集めることを目的としています。
academist WebサイトURL:
https://academist-cf.com/
・アカデミスト株式会社
アカデミスト株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:柴藤亮介、URL:
https://www.corp.academist-cf.com/)は、学術系クラウドファンディングサイトおよび学術系メディアの運営会社です。活気あふれる新しい形のアカデミアの創出を目指し、研究費獲得のためのクラウドファンディングサービス「academist」 および学術系メディア「academist Journal」を軸とした事業を展開しています。
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